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2007-09-25 山形大学学長選挙

_ 山形大学学長選挙

学長選挙では勝ったものの学長選考会議で選ばれなかった山形大学前工学部長の小山清人氏のブログを見た。ユーモアと抑制に富んだ、典型的な精神衛生の良い学者に思われた。教育者としてもなかなかなものがある。教職員の大きな指示を受けているのも当然に思われる。写真から「灘高東大」の一類型をイメージしたが、山形同様森林濃い和歌山県出身で、山形大学、同大学院出身で、プラスティック成形加工等の専門家のようである。

一方、今回新学長に就任する結城章夫氏は典型的な地元出身のエリート。山形東高を経て東大工学部卒。科学技術省出身者で初めて文部科学省事務次官に就任しているから政治的な手腕もなみなみならぬものがあるに違いない。官に勤めた後、貧しい郷里に尽くしたいという気持ちはよく分かる。

山形大学は、2010年に創立百年を迎える。人口減に苦しむ地域に残る人材を育成する大学として全力を投じたい構えだろう。

私は、国立大学法人化には、二つの側面があったと思う。その一つは、経営効率を考えない地方大学に独自の経営をさせることによって「淘汰」を行わせる。山形大と福島大の教育学部合併騒動もその一つだった。もう一つは、あくまで財源を文科省が握り続ける支配の継続である。私が驚いたのは、200名以上の文科省OBが、中央との交渉役として地方国立大学に天下ったことである。私は、これは当然そうなることを予め読んでの文科省行政だと思った。もはや中央官庁が何か新しいことをするときは、人事ポストを作ることが前提目的というのは常識だと思って良い。同時にこれは地方分権化に抵抗する一つの政治的な手法とも言える。

今回の、前学長主導による学長選挙結果を無視する結城氏選出は、どう見ても民主主義的ではなく、多くの人が納得しないことだろう。でも結城氏ならば中央から金を引っ張れる。大型医療施設が山形大へ誘致されれば、医学部収入も上がって人件費が出る。貧しい地域の涙を飲んでの選択とも見て取れる。医学部が欲しい重粒子線治療装置はガン治療のものだが、必要だがペイしない装置の典型とのことだ。医学部はどこでも装置が高すぎて死にそうである。すると装置を降ろす会社と官学の癒着もあろう。

安倍首相を入院させた遠藤元農相は山形選出である。しかも農協組織によって支えられている人物であった。貧しい地方には旧態然とした支配と慢性的な資金不足があり、その苦肉の策が、中央とのパイプを持つ人物をトップに据えることになる。

でもなぜ山形大は、暫定次期学長として、結城氏を副学長に選び、小山氏を学長にしなかったのか。そもそもは地域のための旧制高等師範を大学化した国立大学で、急務である教育学部の立て直しが優先されないことはきっと将来に禍根を残すことだろう。これが分らない工学部も医学部も、象牙の塔の中で、文科省同様、末端の人々が求めることを深く考察できないのは残念なことだと強く思う。