2008-02-05 敗戦の弁
_ 敗戦の弁
「敗軍の将、兵を語らず」とは言うが、読者に今年度中学入試のaspectを伝えるために冗談抜きで「本気」で書く。
本年入試は、出題傾向を変えた学校が続出した。まだ実際に全ての入試問題に目を通していないので確たることは言えないが、特にそれは社会理科に現れたようだ。また、医学部や理系を目指す女子が多くなったことからか、女子校での算数の難化が目立った。国語は、当ブログ予想の通り、例年と大きく変わるところはなかったようだ。
社会理科の変化については、PISAの結果影響が大きいと見る。既成の知識よりも時代状況に直結した新しい知識/概念を要求する傾向が強いと思う。とは言うものの、あくまで知識なので、時事問題的に事前に対処があれば得点するのは容易だったろう。
実際入試では、合格最低ラインに多くの受験生が集まるから、例年であれば、理社詰め込みを抑えても、国語で高得点させれば、ギリギリで合格してしまうわけであるが、今年は逆に、5点足りなくて失敗するものが続出した。試験問題が変化して難しくなったのに、合格最低点が下がらないので、例年的な得点だとギリギリで不合格になってしまうのである。これは特に上級校でその傾向が強かった。
結果的に本当に不本意なことに、長期の勉強に耐えて基礎事項を完全吸収して、その上で新傾向を読んだ知識を入れ切ったもの=私がバカにする連中が勝つことになった。つまり算国だけの高得点では受かりにくいのが今年の入試の特徴であった。国語で高得点しても、あと5点不足してしまう。
私は今年は日能研が強かったと思う。日能研は、長期に安定して生徒を通わせる傾向が強い進学塾であるから、基礎知識を無理なく吸収させ、その上で予め入試傾向を予測した対処を行ったと見る。スッタフも優秀なのであろうが、ここは高木幹夫代表の先見性に軍配が上がったと見るべきだろう。試しに彼の書いたものを調べて見たが、家庭のあり方について、驚くほど私と一致点が多く、呆れたというよりも感心して若干畏怖の念さえ抱いた。彼の息子は成城学園に通い、私の子どもは公立都立を選択する。サピックスは苦しかったろう。2月4日に行うと宣言していた結果発表が未だなされず、おまけにその宣言すらも削除されている。
ご存知の通り、私はこの一年間忙し過ぎて、多すぎる生徒に対して細かい対処はできず、PISAのことがアタマにあったにもかかわらずその対策を錬る余裕がなかった。そして、できるだけ勉強時間を少なくして最低ラインで合格させる作戦は、10年に一度くらいの入試変化の時に、今年と同様、理社で得点が足りずに合格が苦しくなってしまう。「国語は本当に力をつけていただきました」とは言われるが、第一志望に入れることが仕事の受験屋としては申し訳なく思うことこの上ない。
第一志望に破れた諸君には、誠に申し訳ない。本年は、私こそが「詐欺」であった。しかし、捲土重来、すでに来年度の方向性は立てたが、それはここには書く分けにはないことは、既存の「冗談」読者にはご理解いただきたいと思う。ギリギリでこのラインを隠蔽しなければせっせとこれを読んでいる同業者を助けることになってしまう。
しかし、面白いことに(と言っては僭越であるが)、結果的に偶然、皆自宅近くの私立に通うことになった(実はこれこそが、私が一番推奨していることである)。
それにしても、我が愛する麻布はどうしたことか、トップ校の慢心であるか、国語出題は四谷に見抜かれ、社会出題も日能研に見抜かれ、私は実は危ういと感じていたが、教師の質の低下が垣間みられた出題であった。
このようなていたらくな本年V-netの有り様であるが、ほとんど全ての人に、「先生のところで学ばせていただいたことは実に大きかった。中学以降も是非よろしくお願いしたい。」と言われて、恐縮すること限りない。ご理解あるご家庭に心底礼申し上げる。
しかし、我々は続いて、本業の高校大学入試に取り組む。
まだ「春」は来ない。
以上、「冗談」でもなく、「営業」でもなく書いた。