2008-02-25 ブロッコリー ピヨドリパロリ カラッポロー
_ ブロッコリー ピヨドリパロリ カラッポロー
武蔵野市在住のMさんは、筆者行きつけの花卉店で偶然お逢いした人物で、こんな話をした。
Mさんは、長らくの自然食愛好家で、産地直送の有機自然食野菜を味わううち高じて、自分も作ってみたくなって、プランターで野菜を作り始めたそうだ。ナス、キュウリ、トマト、自分の作った物は信じられないくらい愛おしく美味しい。しかし気候が変わって来ているせいもあってなかなか上手くできない。で、秋以降も連続して冬の作物に取り組んで来た。ホウレンソウは面白くなかった。カブもいまいち。レタスもこんなものかと言う感じ。ところがブロッコリーは違った。やせたキャベツのような葉を広げて、だんだんだんだん大きくなり、ついに青い花心が現れた。これが大きくなるのが、まるで「娘」の成長のように、毎日毎日楽しみで、しかも春が近づいて庭に花がたくさん咲き、ウグイスなどの鳥も現れ、愛おしいことこの上ない。だからであるか、Mさんの手にする籠にはブロッコリーの可愛い苗が並んでいる。
Mさん曰く。
ある朝、寝床で、窓から漏れる、まるで『墨東奇譚』の終末部のような気持ちの良い陽光のもと、外ではピヨピヨと鳥のさえずりが聴こえる。
「春眠暁を覚えず」などと一人ごちながら目を閉じて、鳥たちが自分の庭を天国のように舞い楽しんでいる姿を想像しながら安眠をむさぼる。。
ややしばらくして起床してリビングのカーテンを開けて庭を見る。
目の前の花は何も変わりはない。相変わらずなんて美しい。
しかし、Mさんの目は、花の向こうのブロッコリーのあたりに釘付けになった。
そこには、悠然と葉を広げているはずの植物はなく、あるのはただ芯と化しただけの緑の針金細工のようなものだけだった。
走り寄って見る。
芯じられない。完全に喰われちっまっている。
一瞬アタマが空っぽになった。
すぐにグーグルで、「ブロッコリー 食べる 鳥」で検索すると、
「私のブロッコリーもヒヨドリにやられました」と言うブログのオンパレード。
そして、その瞬間Mさんの頭に浮かんだのは、
「ブロッコリーを餌に、ヒヨドリを完全に捕まえる装置」であるそうだ。それで新しいブロッコリーの苗を買いに来たところだとのことである。
また、捕らえたヒヨドリはブロッコリーの代りに焼き鳥にする予定だそうだ。
鳥インフルエンザが怖くないのか?
自然への好奇心もここまで行くと「変態」である。
しかし、それをやるのはイノシシのワナを仕掛けてイノシシ鍋をする百姓と同等に「自然」でもある。
Mさんは、私と同様、紺のコートを着てマスクをしている。私と同様、年齢は分らないが、肌の色と毛髪の状態から、私より一回り下、30代後半とお見受けした。平日の午後ここにいると言うことは会社勤めではない。
そのMさんが、「今日は僕のつまらない話を聞いてくれて感謝します。でも、その「御礼」とも言えないが、もう一つだけ、貴兄に、大変恥ずかしいのだが、これにちなんだ俳句を詠んだ。何かのご縁だから、貴兄に聞いてもらえまいか?」と、真顔で請うので、これに快諾してもらったメモが巻頭である。Mさんは私の答えを得る前に、高級外車に滑り込んで発進した。多分「通院中」の方ではあると思うが、最近遭った中で最もオモロい人物の一人であった。
以上全て「マジ」で書いた。