2008-03-29 ㊙技
_ ㊙技
相変わらず六年制私立の落ちこぼれ君たちの相手をしているが、中には親が聞いたらたまげるような㊙技を使う生徒もいる。
「パソコンやり過ぎで成績不良」とのことだったが、授業をしてみると、一見のらりくらり風だが、実は極めて頭脳明晰。カラムを散々やって和んだ後、説明を求めると、あっさり「自白」。
「テストで7割以上とって一番上の特進クラスに入ると、地獄のようなプリント攻撃と威圧的な授業をする教師の授業を受けなければならない。だから、わざと点数を調整して、一番下のクラスで仲良し友達と愉しくやっているのです。」
この生徒は、「学校の授業は聴いているだけで充分で復習が要らない」というから、苦しんでいる生徒たちからすれば羨ましいとしか言いようがない状態である。
私はこの生徒を「大物君」と認定した。
彼はクラスの友人の間で人気絶大で、彼らを思いのままに采配できるという。
パソコンも実は彼が開いたオンラインゲームで、ネット上で電話回線が繋がった状態で、何人もの同級生が参加している仕組みだそうだ。
彼は通学時間が長いことに辟易している。往復3時間半である。慣れたとはいえ大変だろう。
そこで提案してみた。
「6年制私立で成績優秀だと、早大高等学院や慶応義塾に抜けるのは意外と簡単。早大学院なら通学時間が半分以下になるし、どう?」
答えは、「やっても良い」とのこと。
それにしても中堅6年制私立特進科では約半分が落ちこぼれるという。
この生徒は、「無意味に苦しんでいるものも多く、バカらしくて受けていられない」という。
功を焦る教師も親もこういった生徒が存在することにまさか気づくことはないだろう。
子どもたちは過酷な学習状況の中で、周囲の大人が想像もできないことを思いついて実行する。
この生徒に限らず、潜在的なメンタリティーが高い子どもたちは、ただ勉強ができるように仕向ける教師や親たちを完全に見下している。
一番の問題は、特進科指導が、高度成長期鬱病誘発型、生徒の精神衛生を無視して行われ続けることではあるまいか。
私は、ここにサピックス型教育の一つの「終末」を見る。
大人の意図で、あまりにつまらないことを我慢して行う子どもはろくな大人にならないと私は思う。遊びたい盛りの子どもたちに,学校の進学実績のために資本主義的競争原理で自主的に学ばせるのには限度がある。
ゆえに、「㊙技」を使う能力がある生徒はなかなかの「大物」である。
しかし、「油断大敵」ということを忘れてはならない。
14歳からは本格的に勉強するべきだ。