2007-07-20 SEOUL紀行ー連載第21回
_ SEOUL紀行ー連載第21回
私はまだ韓国の人との距離感を意識している自分を認識する。この距離感は、どちらかと言えば、向こうが発する潜象である。しかし、酒の力がそれを滅しつつあった。社長さんは育ち良く人良さそうで、奥さんの尻に敷かれているというよりも奥さんと子どもたちを本当に愛している印象の男。しかし、その額から金の計算の苦労も消すことが出来ない経営者。好感を持たないわけがない。彼にとって私は「感謝」の対象である。私は、「あなたがお相手で良かった」波動を出すことにした。できたら、「フェロモン」で行きたいが、そんなものを出す力があるわけがない。まあムードってわけよ、簡単に言えば。てなわけで、各々目の前の、支那鍋をひっくり返して釘で穴を空けたような、韓国版ジンギスカンを突っつくうち、「焼肉教徒」となったのでありまする。
酒席中央筆者左手に好奇心満々社会科見学優等生のタナカさん、ついに彼は扶桑社外経費で歓待されている。右手に翻訳者のユンさん。筆者正面は、私同様働き過ぎの中年男社長のキムヤンゴン氏。正面その右が物怖じしない、若き働く、最も現代韓国的な女性のソさん。この人の度胸は釜山仕込みだそうだ。実は、「度胸」よりもっとたちの悪い、健全な「好奇心」の強い女性なのであろう。この人はアタマが速い。社長左がエイジェンシーのキム嬢。彼女はアタマが良い。「状況」を了解する力に優れる。一見物静かなのに好奇心が深い。早く「作家」になった方が良い。彼女のさらに左隣は、焼酎ビール割り(正確には、「焼酎ビール落とし」)をあおり続ける、今や「過去の記憶」を捨象して、相好を全く崩して上機嫌のリムさん。左右奥も楽しそうに盛り上がる。いつも思うが、焼肉を焼く時の効果音は、人類を平和な心境に赴かせるのである。我々モンゴロイドは、少しの翻訳で、かくも交流できるのである。同時に、死んだ父が言っていた、「両者シャンシャンシャンがビジネスなのよ」というのがよく分かる会であった。