2007-08-02 SEOUL紀行―連載第23回
_ SEOUL紀行―連載第23回
朝7時に目が覚めると外は雨である。しかし、山からの波動は相変わらずである。絶えずそちらへ吸い取られようとする自分を発見する。
朝食をとってアタマの整理。今日は男の子と女の子の教育の違いについて話すことになっている。人気の三択キーズは今日はほとんど使わないつもりだ。韓国の大学でなので、普段日本で語れないことも語ってしまうつもりだ。忘れてならないのは、性別的教育論はα―フェミニズムの批判にさらされやすいということだ。でもこれは問題ないであろう。私は、仕事上、常に、女性の、というより母親たちの味方をして来たのであるから。後は大学での講演なのだから、やや高度な聴衆用なものも用意したい。これも言いたいことを言えばいいのでどうにでもできる。後は少子化社会のみならず、高齢化社会における幸せを視野に入れた教育の仕方が大切であることを強調して締めくくろう。
ロビーでタナカさんとキムさんと合流。田中さんは、朝から「見学」で街を歩き回って来たそうだ。20年以上前のこの人の修学旅行の時のことを想像する。リーさん運転のハイヤーでヨンセー大へ。雨の中道路脇歩道に店が出ていて人だかりがしている。朝食代わりの食べ物を売る店である。もし街を歩いているなら、すぐに私はこれを求めて近くの人と情報交換するだろう。ハイヤーのドア?ウィンドウの境界を恨めしく思う瞬間である。
ヨンセー大は行ってみると、どでかい大学で、キャンパスの中の広い道を車で走る。多くの若者が歩いている。日本の若者より、少しは学生らしいことを言いそうな男子学生の表情。良く本を読んでいる感じである。
多分キャンパス中心近くの大きな講堂が講演会場である。最近立てられたものらしく、広々としたロビーに安っぽくない木のしっかりした椅子が置かれ、奥には余裕のある広いカフェテリアもある。入り口は忙しそうに会場設営する出版社の人たちでごった返していた。次々に私の韓国版の本が積み上げられ、ポスターが貼られ、すでに並んでいる入場者の整理をしている。ソーさんが出て来た。さすがに疲れていそうだが、若くて元気で前向きだ。こういうのを「α」というのだろうか。
会場内最前列にノートパソコンがある。そこが今日のソさんの席らしくって、彼女は、私に頼まれたスクリーンに映し出す図を作っている。これは全て漢字による図なので、それを韓国語に訳す時にキムさんの助けが必要なのだった。
聴衆は多かった。案に反して学生より主婦が多かった。800人ぐらいだろうか。もちろん男性もいる。
まず男の子と女の子の本を書き上げた哲学を解説した。境遇と環境、好奇心と追体験、感受性と心情表現、そしてそれを磨く唯一の手段としての道学芸術技。男の子のチョロチョロに代表されるのが好奇心と追体験、女の子の感受する能力に代表されるのが感受性と心情表現。もちろん両者がミックスブレンドされた形で個人の中に共存していると説明。これを、通訳のキムさんに請われて私にしてはややゆっくりとやって、キーズをちょっとやって、人生90年哲学を述べると、残りはちょうど5分くらい。やや質疑応答をして、盛大な拍手をいただいてホッとして外へ出ると、そこにはサインを待つ人の山があった。この講演だけで350冊売れたそうである。何かテキ屋な気分を味わうことしきりであった。