ブイネット教育相談事務所


2008-12-27 「年度末学級崩壊」

_ 「年度末学級崩壊」

新聞で教師の精神疾患の増加が報告されている。

中3二学期。内申点が決まると、「年度末学級崩壊」が始まる。しかしこれはすぐに冬休みに入るので、「一時停戦」。三学期に入ると、推薦決定組と私立一本狙い組が活動を再開。公立受験内申点ガッポリ女子も「内職」に勤しむ。そして、私立高入試が終わると、「戦闘開始」。これはまだ公立高受験生がいても始まるのが通例である。最早彼らの我慢の臨界点を超えてしまうらしい。教師の方では内職容認や「自習時間」にしてしまう者もいる。都立高入試が終わると、学校は、合唱コンテスト、球技大会、社会科見学の連発と、その対策に余念がない。つまり、授業をしないで集団行動させるのである。このガス抜き効果は意外と大きい。こうして、卒業式の頃は高校進学ニッコニコの春の気分で、日の丸君が代以外にはそう大したことなく無事義務教育が終了する。

授業を少なくして集団行動を多くさせると子供は教師にストレスをぶつけない。授業が嫌なのは明らかである。なぜか。それは彼らにとって学校授業は単に内申点を取ることだけが目的の「労働」だったからである。しかもそれは、少なからぬ屈辱にまみれた劣悪で能力の向上が体感できないものらしい。つまり、必要以上の支配に甘んずる「准奴隷状態」といえる。彼らの認識では、能力と点数は比例しないという。他の要素が内申を決定する。そしてそれは女子に有利だ。手の込んだ出来上がり水準の高い提出物、教師に絶対に軽蔑を見抜かれない完全演技。男子の半分近くは内申を取ることを捨てしまう。

大人になれば彼らだって、馬鹿な相手だからと言ってその目の前でバカと言うとバカの壁を越えることを知るだろう。だいいち、その頃には己のバカさ加減も知るから人にそれは言えない。しかし、男の子は違う。裸の王様。自分たちを支配する馬鹿な大人を見ると、からかってやろうとすることが多いのである。しかも彼らには内申点の恨みがあるから、けっこう情け容赦がない。内申点の脅ししか使う能力のなかったものを総攻撃するのである。

中3とはいえ、中には教師より論理思考能力やリテラシーの優れるものが多く出る。特に成績優秀者は間違いなくこのたぐいであろう。彼らに「シナリオ」を書かれて挑まれた場合、教師は手ひどい目に逢う。

中年ヒステリー論理的思考ゼロで、内申点えこひいきしまくり、授業は聞くに堪えない国語女教師。2学期最後の授業はほとんど誰も聞くものがなく、クラス中が授業中に内職に走る。ここでも女子は優れる。彼らは内職用の記憶カードを作って来てそれをノートにはさんで前の者の背に隠れてこれを覚える。ところが毎度おアホな男子の一人、数学天才君は堂々と数学の問題集を広げ難問に没頭し、周囲を顧みることはない。コソコソしない分だけ潔いが、これが教師のターゲットになる。ちょうど見回りに来た教師が言う。

―何をしているんですか!

―数学だよ。

―今は国語の時間です!

―あっそ、国語と同時にやっているんだよ、勉強の邪魔だからあっち行って。

教師が怒って問題集を取り上げる。すると、生徒は机の中から塾の英語問題集を取り出して始めようとする。

―今は国語の時間です!

すると生徒は黙って、となりの男子生徒を指差す。隣には英語問題集を広げる男子生徒がいる。

これに教師は見事引っかかって、今度は隣の生徒に噛み付く。

―何やってんですか!今は国語の時間です!

すると、隣の生徒がまた別の、英語の問題集を広げている生徒を無言で指差す。

教師はまだ気づかない。

―キミも!今は、国‥…

と言いかけると、当然のように生徒は別の生徒を指す。もちろんそこにも英語の問題集を広げている男子生徒がいる。見回すと周りの生徒が皆英語の問題集を広げている。呆然と立ち尽くす教師と大爆笑。この時は、「しかたがないわね」という顔で苦笑する優秀女子も含めて、クラス全体がまとまって笑う。

これらは、予め打ち合わせしていることが明らかなのであるが、教師はそれに気づかない。あっけにとられて何を言おうか口をパクパクしていると、ここでタイミングよく授業終了のチャイムが鳴る。数学天才君が、まるで見事パズルを解き終わった時のように、教師の後でVサイン。男子生徒は一斉に廊下に出てしまう。

毎年夏休み前などに国語科が勧める図書に漱石の『坊ちゃん』が入るは常のことだが、「禁書」にしないのは彼らの鷹揚さの現れか。問題は、指導要領や評価基準、カリキュラムなど、上から押し付ける形で教師が自由に教育する機会を制限し、型に従わせることだけに終始する文科省システムが、現在の子供たちが全く受け付けないものになっているということだ。いくらでも対処法がありそうなものなのにそれができない。

新指導要領や文科省予算の内訳を見ても、彼らが既成の路線を改める気がないことは明らかである。

『教師が病気にならない方法』を執筆したいが、どこか出版社でご希望のところはあるまいか。

以上全て「冗談」で書いた。