2009-06-20
_ 「天敵」の子ども
生徒たちの未来幸福の方が優先されるのはもちろんではあるが、それでも私は自分の育てている植物の無事成長を強く願う。
作付けした野菜類の成長が順調だ。この分だと、ナス、キュウリ、ピーマン、枝豆は当分自作で生活できそうだ。特に二階ベランダの45×60の深いプランターに植えた6本のナスは密林のようになって次々と花を咲かせ実をつけている。
ところが、別に権益にたかる者たちに喩えるつもりはないが、このナスのジャングルに大量のアブラムシが発生。特に新芽の紫のところにびっしりとたかっているのが腹立たしい。顔を下げて根本から上を見上げると、まるでナスの葉のドームのようになった緑の世界の葉の裏側にドヒャッとアブラムシがついているのが見える。同時にどこから現れたのか大量のアリが発生し、さらに良く見ると、小さいハエやハチなどたくさんの昆虫が集まり、どれもが活発に活動し、まるで自然のコミューンの有様である。いったいどこからどうやってくるのであろうか、カマキリもいた。
とりあえず、手で取れるだけアブラムシをつぶした。しかし、細かい虫はきりなくいる。いくら獲っても明くる日にはまた新たなアブラムシが発生してしまう。このままではいつか、ある暑さが続いた日の後、「爆発的大量発生」が起こって木が枯れてしまう。どうするべきか。考えた。しかし、殺虫剤は使いたくない。大切な野菜である。木酢液をかけてみた。変化はない。仕方がないから手でやはり獲れるだけ獲ってしかもシャワーで洗い流す。これからずっとそうすることにした。
こうして、約一週間毎日原稿の合間にアブラムシと戦い続けていると、ある日アブラムシが目立って少なくなり、終いにはほとんどいなくなってしまった。うれしいけれど不思議に思ってナスの葉を良く眺めると、前からいたと言えばいたのであるが、腰のところにオレンジ色の輪っかマークがついた、まるで羽をとった蛍のような、体調5〜8ミリくらいの虫が一杯ついている。この虫がまんべんなく葉の上を這い回り、アブラムシを見つけると吸い付いて体液を奪うのである。良く見るとテントウムシも何匹か来ている。他の小さなハチも数が増えている。どうも、都会に湧いたアブラムシを都会に湧いた別の虫たちが食べに来てくれたらしい。もし殺虫剤を使えばこのようなことにはならなかっただろう。やがて手のつけられないほどいたアブラムシは壊滅した。我が検察をテントウムシに喩えられないのが誠に残念である。
それにしてもあのオレンジマークの虫は何だろう。ネットで、「アブラムシ、天敵」で検索。するとこれまで誠に不勉強であった自らを恥じるが、それこそがテントウムシの幼虫であったのである。テントウムシは、幼虫の段階で約800匹、成虫になってから約100匹のアブラムシを食べるそうである。これではアブラムシはひとたまりもない。これまで50年以上、成虫こそがアブラムシの天敵だと信じ切っていたが、実は幼虫が本当の天敵だったのである。
私がナスのプランタージャングルを作らなければアブラムシはやって来ない。アブラムシが来なければテントウムシは来なかった。テントウムシが来なければナスがダメになってしまう。天道もの言わずして国土に恵み深し。小さなことだが、自然の奥深さに妙に感動した。