ブイネット教育相談事務所


2008-01-07 寒中V-net

_ 寒中V-net

新年やや仕事を休んだが、「もっと休みたい」と思う気持ちが残るまま、受験と出版の最前線に復帰。皆様、このつまらない問わず語りに、いったいいつまで続けられるか分らないが、何卒よろしく今年もお付き合い願いたい。

V-netは例年通り、さながら受験の道場の様相。自習組のせいで、今日は全ての予備デスクがふさがった。

今年の中学受験組もなかなかユニークな連中である。

「母が美味いと言って飲みまくってそのまま寝込んだ純米吟醸を、自分も飲んでみるとこれが結構美味しい。調子に乗ってつい飲み過ぎて今日は二日酔い」と言う自衛隊ヘルメット姿で早稲田中狙いの戦闘小説作家君。

「ダメなら公立へ行く。僕はこの学校以外に行きたい学校はない。」と、最後まで走り続ける武蔵一点狙い読書三昧君。

「何としても箱根を越えて都会の学校へ出たい」と言う超器用新幹線聖光浅野狙い撃ち君。

「ボクはうるさいオンナのいない普通部しか眼中にない。オンナはオレが選ぶ。早稲アカの正月特訓も軽かったぜ。」と軽口を叩きながら、嫌がらせで早稲アカ鉢巻きをして自習する超ハンサム君。

「妹や親の気持ちなんて分らないが、どうしても麻布の国語がマトモに書けるようになる記述力が欲しい。」としつこく過去問を繰り返す湘南ライナー蕎麦好き君。

「お母さんに、ゲームに加えてマンガも取り上げられました。先生のグラサンの本もマンガに入って捨てられていました。でも、本屋で読んでいますから大丈夫です。麻布に受かった瞬間に、もう母には何も言わせません。オチンチン力です。ヒッヒッヒッヒッヒー。」と不気味な笑いの算数天才君。

JGやってもいいのに自宅近くの吉祥で完全合格狙いのご両親超ご協力の一人娘。

大きなお父さんに奥手の自分でそれなりに作戦を練って最低でも芝に潜り込みたい慶應狙いの意外としぶとい君。

本年度最奥手、芝狙いのサピ長年通いの単刀直入君。

明の星、余裕合格のはずなのに、わざとさりげなくモタモタして、母親の愛情を搾り取るおませちゃん。

この他中学の部、高校の部、大学入試の部と、「個性的」というよりも、自然にそうなっている人材多し。成長過程の彼らは、V-netの自由な空気で勝手に学び勝手にほざき、キャロムをやりまくる。全国津々浦々で通じる人たちもこれに同じ。偏差値を気にする人は一人もいない。

正直例年ながら恐れる。もしこれで例年通りに合格者連続ならば、世のほとんどの教育機関は「詐欺」である。V-netの生徒たちは、いわば強制されずに勝手に学んでいる学徒たちである。責任者は吉田松陰の足下にも及ばないが、ともあれ彼らは自発的に勉強している。それに感謝する「差し入れ」も多いが、焼酎同様あっという間に「蒸発」する。

「発電所」というのが相応しい。生徒に乗せられた教師たちが発電してエネルギーを売り渡す。

そうなのだ。教師とは「娼婦」なのだ。ストレス発散と同時に、明日への希望を与えるものたちなのだ。「知識」を与えるだけなら簡単だ。そうではなくて、自己の体験に基づく「エネルギー」を出してこそ、「教師」なのだ。

私はほとんど全ての子どもたちがそれを望んでいることを冷静に観察する。

そして、何を行うにおいても、そのことを、「賢くなること」の題材にすることを提案し続ける。

しかし、私は年老いた。元気な諸君と付き合うことは楽しいことこの上ないが、家人同様、いささか身から出た錆ではあるが、この自由奔放のクソガキどもにマトモに付き合っている体力は最早ない。彼らは歳とったとき元気が当たり前ではない事実に盲目である。

と思うと、私のように、若い時に自らの好奇心に忠実である者は意外と少なく感じる。

自分のやりたいことを識ることは意外と難しい。