2008-11-14 流行作家並み
_ 流行作家並み
満月近地点を迎えてやっと少し楽になった。
この半月はきつかった。仕事、相談が集中して、さらに「涙」もあれからまた二連発。
「追加を書く」と約束した原稿を、「後は、インタビュー主体で」と勘違いして、結局慌てて書かなければならなくなった。
遊びたい、遊びたい、旅に出たい。旅行に行きたい。でもその逆にしなければならないことばかり増える。涙は出ないがうめき声ならとうに出している。もし来春も一人旅が許可されなければ、その時は離婚をしてから出かけよう。
進学塾に合わず、母親が苦労して見つけた個人塾もクビにされた小学5年生。人の話をある程度長い時間連続して聞けず、字をいくら言っても読めるように書けない。自分の日常の事件を上手く説明できない。
で、私が個人指導。ところが、一対一でやってみると普通の子よりやや落ち着きがないが、音読もサイコロも一生懸命やって上達する。問題は作文であるが、これは字が汚いのと、書いてあることが意味不明のため、なかなか納得できるものが書けない。毎回物語を一つ書いてくることになっているのだが、超まとまりのない、オチも終わりもないものになってしまう。
ところが昨日、驚くべきことが起こった。定刻前にやって来た彼は、
「家を出る時まで作文の宿題を忘れていたので、今行きの電車とバスの中で書いた。」
と言う。
「えっ、どうやって?」
「ほらバスの手すりにこの筆箱をおいてその上に原稿用紙を乗せて書くんだよ。」
と、四角い筆箱を指す。
さぞかしひどい字になっていることだろうと思って作文を見ると、この子にしては意外と分りやすい字で書いてある。
内容は、オカメインコのチビが僕の家にくるまでと来た後の様子。誕生日は、分けてくれた人に問い合わせたそうだ。これでインコが、「チビ」は言えても、「ヒガシガオカ」のガが発声できないことがオチになっているから一応完結している。
子どもがバスの中で原稿用紙に書き込んでいる姿を想像する。同時に、この子の母親がそれをできないことも想像する。
私はこの子の「大成長」が非常に嬉しくなって、
「すごいな。流行作家並みではないか。」と言って、アタマをなぜてやろうと手を伸ばすと、素早く上体をひねってそれをかいくぐり、
「ラッキー!」
と、歯をむき出しの大笑いで、両手でピースサインをして応える。
カラムボードでも上達が速い。油断すると負けてしまう。
焚火の時も率先して火を飛び越えていた。
そこには「問題児」の面影が微塵もなかった。