ブイネット教育相談事務所


2008-06-01 ウズラハウスの理由

_ ウズラハウスの理由

なぜウズラハウスを着想したのかという声が多いのでここにその解説を試みる。

筆者は、「幼い難民を救う会」という組織に定期的に寄付している。

今から15年くらい前のことだが、「あなたが1万円寄付すると、タイの貧しい子どもが、3年間給食付きで学校に通い技術を身につけて、バンコクに売られることを防ぐことができる」というので、生徒たちにも勧めてこれに参加した。しかし、いくらタイの貧村でも、給食費付きで1万円とは安過ぎると感じ、主催者に尋ねると、

「まず校庭に大きな池を作ります。その上でその池の上の半分を鳥小屋にします。鳥がクソをすると、池の魚が喰い、その魚のクソ水を学校菜園にかけ、野菜を育てます。すると、鶏肉と魚肉と卵と野菜が得られ、給食の材料が確保されます。子を学校に通わせない家庭は、貧しさのために子どもの給食費が払えず(教材費や教師給料は国が負担)、子どもを稼業手伝いに使うので、子どもは学校に通うことができず、やがて口減らしのために都会に売らざるを得ないという悪循環があるのです。」とのお答え。

またそれよりはるか前、筆者は、インド北部カシミールのスリナガールの湖に滞在したことがある。

冬期末の空港に降り立った私は、イスラム教徒の客引きに囲まれ難渋したが、偶然そこに降り立った私以外の唯一の観光客のイギリス人に誘われて、ナギン湖のハウスボート型ホテルにおよそ一月滞在した。

ヒマラヤの雪山は、アルプスの比ではない絶景であり、毎日口をポカンと開けてこれに見とれていると、湖唯一の観光客である私のもとに腐るほどの行商がボート(シカラ)で訪れる。「マガシナキヒン」=I buy nothingというウルドゥー語を覚えたのもこのときである。

さて湖滞在約一週間して、夜、雨が降り始めた。連れのイギリス人は、ラダック→レーに上がって留守である。この雨は翌日も上がらなかった。そうして何と約72時間降り続けた。

丸三日間雨が降り続くとどうなるのか?

それは湖の面積が倍以上になるのである。岸辺につながれたはずのボートは、湖の中央にあるように見える。

「どうなるのか?」とインド人に尋ねると、

「ノープロブレム」と言う。

水が引き始めると同時に、湖畔全体にやや大きな白い花がまるで桜のように咲き誇った。アーモンドの花であるそうである。一挙に産卵した小魚が、もと原っぱの草の間を大群で泳ぎ回る。そして、これが数日で散りかけたと同時に、中天にギラギラと輝く、正真正銘の真夏の太陽が出た。つまり、この地域では春は一週間で、冬の次はすぐに夏なのである。

日本の穏やかな気候が例外的なことを知ったのはこのときだったが、夏の日差しを浴びてホテルのボーイがボートの下に釣り糸を垂れて魚を釣る。ほとんど入れ食いで、40センチぐらいの鯉がどんどん釣れる。これが夕食に出るのであるが、明くる日私はボーイに釣り道具を貸すことを求めた。快諾したボーイから受け取った釣り道具は、浮きもなくただ凧糸と大きな針だけ。「餌は何か?」と尋ねると、「ポテイト」と言う。

ゆでたポテトを付けて半日釣り糸を垂れるが、全く当たりがない。ボーイに尋ねると、

「カレー粉をつけたか?」との返事。

「カレー粉!?」

どうして釣りにカレー粉が必要なのだ。

ボーイが言うには、

「魚はあなたのウンコを食べるために船の下に集まって来る。あなたのウンコはカレー味。だからカレー粉をつけなければ魚は釣れない」。

信じられないことだが、まあ試しにやってみるとバカらしいほどの入れ食いである。

「たくさん釣っても食べ切れずに腐っちゃうから無意味だよ」と言われて3匹で止めにしたが、釣れるのは見事な大型ドイツ鯉である。

以上のことから魚は動物の糞を好んで喰うと断定できる。

そこで考えたのがウズラハウスなのである。

それにしてもウズラもどぜうもいまだ手に入らない。

そしてコンポスト用のシマミミズも手に入らない。

天よ思いのままにミミズを降らせよ。