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2008-04-28 山陰事情と山口補選

_ 山陰事情と山口補選

山口2区補選で自民党が敗北した。町村官房長官は、その敗戦理由をメディアの不親切のニュワンスで語ったが、データを握る政治家が真実を知らないわけはない。また、「この結果は全国的なものではない」との発言もしたが、薩長連盟保守王国岸安倍の山口でのこの敗戦は単に痛い以上のものがあって動揺を隠し切れないのであろう。事実は単純、東北同様、農業関係者が自民党に投票しないのである。

農業関係者と言えば、極めて保守的な存在。毛沢東を困らせたのも土地を手に入れた農民だった。しかも平均年齢が高いため、さらに保守的であるはず。その人たちがなぜ自民に投票しないのか。

小泉流新自由主義的改革による地方交付税の削減、加えての町村合併。これが農家を目覚めさせる大きなきっかけになったことは明らかだが、実は自民票をまとめて来たJA(旧「農協」)が農民の信頼を失ったことが大きいのではないか。

収穫物は、JAに預ければ売ってもらえる。補助金もつく。しかし、JAから配給された農薬、化学肥料、農業機械のローン、年金、健康保険料、その他を引いて農家が手にする収入は、「これでどうやって生活するんだ!」という金額である。おまけに、農薬による肝臓がん等を初めとする健康被害は思いのほか大きい。若い世代は当然とうに見切って、都市労働者として故郷を捨てる。そして、地獄のような「過疎」が押し寄せる。金が入らず老人が増える。どうしようもない。

「JAにダマされた」、「JAは自民党の下部団体だ」、「道路作っても儲かるのは会社だけ」。

これが山陰の人の多くの声だった。  

私の目には、これは「国家公務員」と「地方公務員」の戦いにも見える。

国家と地域のどちらを優先するか?

「地域」であるに決まっている。それも「地方」であるほど。

自民党は速やかに農家に受ける政策を提言をしようとするだろう。

しかし、その「法案」が通る見通しはまことに少ない。いちいち「再可決」を踏むのでは、人気取りの政策なんて、簡単にできるわけがない。

最早自民党は、次次回を鑑みて、たとえ惨敗するのが見えていても衆院選挙を行わなくてはならなくなろう。トリックスター小泉はまず登板しないだろう。ということは一か八かの舛添でも負けるという姿が次回衆院選の自民党の姿だろう。アソーは本を出して頑張っているが、外務大臣に「さいとうたかを」据えることはできないだろう。

考えてみれば、民主母体がトップ層ではない公務員であることを思えば、負ける自民は「天下り」と「公共事業」、つまり、人事権と配分権を失うことになる。しかし、公明党がこれ以上に社会福祉資金を失うことはないだろう。彼らは耐えたのである。地方同様に。

でもね、小沢は権益の美味しさを知る旧田中派出身。だからこそ、自民民主合同に色気を見せた。ということは、小沢は「後ろ盾」に自信があるというわけだ。

さて、もし皆さんが「高級官僚」であれば、次の打つ手は如何なさいますか。

ダイアローグの練習に使って下さい。

ローカル車内で見た山陰は本当に貧しかった。旧西ベルリンから東ベルリンに入った感覚に近かった。そこには、都会とは異なる意味で、「耐えて生きる」人たちがあった。

生きることに耐えている人たちは、ダマされて生きることに耐えることはできなかろう。

「百姓一揆」を感じさせる今回の選挙の結果であった。