ブイネット教育相談事務所


2005-06-30 佐藤優『国家の罠』

_ ちょっと暇だとつい本に手を伸ばしてしまう。昨夜佐藤優『国家の罠』(新潮社)を読んだ。これは外務省ノンキャリアの佐藤が鈴木宗男とロシア外交に打ち込み過ぎた結果、逮捕され、500日以上も拘禁された際の検事とのやり取りを主に書いたものである。国策捜査で失脚させられた者の「負け犬の遠吠え」と言えばそれまでであるが、外務省内や検察内部の様子や拘置所生活を詳しく描いてとても面白い読み物になっている。

発売後約一ヶ月で5刷になっているから、これからも多くの人が読むことになるだろう。恐ろしいのは、政治家から外務官僚、検察官、裁判官まで全て実名で書かれている点である。本人は自分のことを「情報屋」と呼んでいるが、これからは外交にも大学にも職を求めるつもりはないと言い切っている。ということは、作家か評論家を志すことになる。多いに賛成である。これからも思いっきり外務官僚の卑小さや、大学教授たちの精神性のなさをどんどん書いてもらいたいと思う。この人の文章には、書くべきではないと判断したことを絶対に書かないようにする手法をとることにより、かえって読者を引き込む上手さが随所に見られる。軟弱さを自覚しない、そこらの作家が歯が立たないほどの文章力である。

最後まで保釈を求めず、結局執行猶予付きの判決を得て外に出るが、即日控訴を行って全面的に戦い続ける決意のようだ。本当に国家のことだけを思っていたのかは完全には分からないが、同志社大学神学科大学院卒の哲学所有者が、安易な妥協をせずに真実を提示しようとする姿は、大いに敬意を表すべきところがある。家族がいないこともあろうが、この人は命を賭けて活動している。イエズス会の修道士を想わせる。

思わず私も動きたくなってしまった。我が国の劣悪な教育状況が改善されることは今のままでは絶対にない。文科省もダメ、教育学者もダメ、教育者もダメ、国民の意識もダメ。そのことを憂えてずっとやって来たのは他ならぬ私自身である。そして、犠牲者は我々の未来を担う子供達である。これまでのように批判や警告を発するだけではなく、何かここで命を賭けてやるようなことがある気がして仕方がない。とはいっても、徒党を組むことや政治的なことが大嫌いな私がするべきことは、やはりより良い書物を作って行くことしかないだろう。しかし、儲けの薄いものを引き受ける出版社があるわけもない。人生残りわずか、なんとか悔いのないように生きたいものだ。